リ サ イ タ ル

 


 平成13(2001)年の第4回りサイタル「中島勝祐作品展」のために創作された上方浄るリです。.歌詞は近松門左衛門(1653~1724)原作の『心中天綱島』の下巻「名残の橋尽し」から抜粋して一中節に取り入れられた詞章に基づいて構成Lています。原作は人形浄瑠璃のための世話物で、享保5(1720)年2月に大坂の竹本座で初演されまLた。時に近松六十八歳で、遊女との心中事件を書いた最稜の作品です。  大坂天満の紙屋治兵衛という妻子ある分別盛りの男が、曾根崎新地の紀国屋の遊女小春と深い仲になり、最期には心中します。それを予感した女房おさんは、小春に手紙を書いて夫を諦めるように頼みます。小春も女房ヘの義理からそれを密かに受止めて、治共衛には心にもない愛想尽かしを装います。純朴な治共衛は小春の心変わりを怒って縁を切り、一端は状況が打開されるのですが、小春が夫の恋敵の太兵衞に請け出されると知った女房は、「小春は死ぬつもりだ」と直感。女同士の義理絡みで手紙の一件を夫に打ち明け、小春の身請金を整えます。ところが、それに怒った実家の父親がおさんを連れ戻したことで全てが水の泡となリ、結局、治共衛と小春は心中するのです。二人は曾根崎新地から道行の末、綱島(大阪市都島区。淀川左岸)の大長寺(現在のJR大阪城北詰駅付逝、藤田美術館の辺り)を最期の場所と決めます。  この曲は、大長寺ヘ向かう辺りから語リ始めますが、特に、死出の旅に向かう哀れにも美しいニ人の心情描写に焦点を当てています。なお、演奏に際しては、上方風の音色を出すために長唄三味線に地歌の駒をかけています。
 土方の楳若勧ニ郎師は、昭和19(1944)年ご福岡県曲豊前市の生まれ。花柳涜の手ほどきを受けた後、東京に出て楳若勧助師に出会い、その支援のもとで昭和38(1963)年に「楳若流」を創流されました。以来、積極的に活動され、芸術祭の栄誉に輝かれまLた。この曲は昨年10月、国立小劇場における御自身のリサイタルで取リ上げられ、好評を博しましたので、今回再演を依頼しました。