リ サ イ タ ル

 

音声

[ 約2分 ]


 今回の第四回リサイタル「中島勝祐作品展」のために作曲した作品です。
 原作の「心中天の綱島」は、近松門左衛門(承応ニ年~享保九年=1653~1724)作の人形浄瑠璃のための世話物悲劇で、享保五年(1720)十二月、大坂の竹本座で初演されました。時に近松六十八歳。遊女との心中事件を書いた最後の作品です。
 大坂天満の紙屋治兵衛という妻子ある分別盛りの男が、曾根崎新地紀の国屋の遊女小春と深い仲になって、ついには心中の約束をします。それを予感した女房おさんは、小春に手紙を書いて、夫を諦めてくれと頼みます。小春はおさんへの義理から、それを密かに受け止め、治兵衛には、心にもない愛相尽かしを装います。純朴な治兵衛は小春の心変わりを怒って縁を切り、ひとまずは状況が打開されます。しかし、小春が夫の恋敵太兵衛に請け出されると知った女房おさんは、小春は死ぬと直感し、女同士の義理絡みで、手紙のことを夫に打ち明け、着物を質に入れて小春の身請金を整えます。ところが怒った父親がおさんを連れ戻しに来たことで、全てが水の泡となり、治兵衛と小春は、心中することなります。
 本日の詞章は、原作の下巻「名残の橋尽し」から、一中節に取り入れられた「天の綱島」の詞章をもとに抜粋しています。
 心中しなければならなくなった二人が、曾根崎新地から「道行」の末、綱島(今の大阪市都島区で、淀川左岸)の大長寺を最期の場所と決めた辺りから語り始め、哀れにも美しい死出の旅に出るニ人の姿を、描きます。
 長唄三味線に地歌の駒をかけて、上方浄瑠璃風に作曲しましたものを弾き語りいたします。