リ サ イ タ ル

 

音声

[ 約2分 ]


 「百歳の恋」の物語は、狂言の「枕物狂」をもとにしています。この中で祖父が恋をうたい上げる「会う夜は君の手枕・・・・・」は、1518年成立の『閑吟集』に「狂」の肩書を付けて掲載されていますので、作品自体はかなり古いものといえます。狂言では、百歳に余るような老人と、その老いらくの恋を案ずる二人の孫と、老人が懸想している乙御前の四人が登場しますが、この作品では老人一人で演じます。乙御前のくだりも、老人の夢の中の乙女として表現しています。この作品では、枕を付けた笹を置き、老人が恋の思いに耽るところから、夢想の世界に入ります。最後には現実と想念とが交錯して、恋の成就の気持のまま「いとほしや、いとほしや」と、笹の枕を抱いて退場して行きます。
 これを作曲した当時は、狂言の「枕物狂」をまだ拝見したことがありませんでしたので、いきなり歌詞の中に飛び込んで、主人公の心情にただただのめり込んで、曲ができ上がりました。しかし、先入観を持たずに取り組んだことが、却って新しい創作の世界を拓く結果をもたらしたのかもしれません。