リ サ イ タ ル

 

音声

[ 約2分 ]


 大阪府高槻市の芥川が摂津峡の渓谷となっている東側の山は「城山」と呼ばれ、その山頂に、戦国大名の「芥川城」の城跡が有ります。戦国時代、北摂に勢力を持っていた土豪の能勢氏が、十六世紀の初め頃に築いたのが始まりといわれていますが、摂津と京都・丹波方面を結ぶ交通の要衝にあたるため、その後、細川晴元、三好長慶を経て、キリンタン大名として名を馳せた高山右近父子が城主となりました。しかし、高山氏の頃には平地の城が好まれるようになり、別途に平城の高槻城が築かれたため、芥川城は江戸時代の初め頃、廃城になってしまったようです。
 むかし昔のとある日、この辺りに住む狸が盛んに田畑を荒らすのを見かねて、猟師が撃ち取ります。本来は無用な殺生をしない猟師なのですが、狸を撃った時の快感か忘れられず、興にあかして狸狩りをします。そこで、勇気ある狸が若い修験僧に化けて、猟師の家に懇願に行く、というのが物語の設定です。
 古来、狸は「狐狸妖怪」とひとまとめにされますが、狐とは違って、どことなく愛嬌があり、月夜に腹鼓を打つとか、酒好きであるとか、狸寝入りをするとか、さまざまの言い伝えもあります。この「城山狸」は、そうした先行の作品を下地に、「一炊の夢」を描いています。