リ サ イ タ ル

 

音声

[ 約2分 ]


 本年は、近松門左衛門(1653~1724)の生誕三百五十周年にあたりますので、その不朽の名作「冥途の飛脚」を赤澤硯治先生にお願いして、私の創作浄るリ向きに、詞章をアレンジして頂きました。赤澤先生は、義太夫三味線の名人であられた先代の六世鶴澤寛治師のご子息で、寛治師が相三味線を勤めておられた名人四世竹本津大夫師の義弟にあたられ、ご幼少の頃から浄瑠璃の中でお育ちになられ、歌舞伎、舞踊、邦楽、民俗芸能に至るまで、日本の伝統芸能について精通されていらっしゃいます。今回も、原作を生かLながら、素晴らしい詞章を構成して下さいました。
 「冥途の飛脚」は、近松門左衛門の世話物の代表作で、宝永八年(1711)に大坂・竹本座にて初演されまLた。今でもも文楽や歌舞伎の人気狂言とLて、たびたび上演されています。北野武監督の「Dolls」も、この作品をモチーフにしています。物語は実際にあった話を脚色したもので、粗筋は以下の通りです。
 大阪は船場淡路町の飛脚問屋・亀屋の忠兵衞は、四年前に大和の新ロ村の豪農から養子に来ました。男振りもよく、養母妙閑の采配で、手堅い商いをしていました。しかし最近、忠共衛は、新町の遊女梅川に夢中で、身請けの手付金のために、客に届けるはずの金を流用しますが、残金の当てはあリません。祈から、亀屋に公金が届けられ、早速、忠兵衛は堂島にある依頼主の屋敷三百両を届けに、金を懐に入れて店を出ますが、ためらいながらも脚は逆方向にある梅川のもとヘと向かいます。梅川は、手付け以来、姿を見せない忠兵衛を想い、泣き沈んぞいましたが、そこヘ忠共衛の親友八右衛門が来て、「忠共衛の金は、自分の金。今後は忠兵衛のためにも、ここヘ出入りさせてくれるな」と話すのを陰で聞いた忠共衛は、恥をかかされたと思いこみ、公金の封を破ってしまいます。公金に手をつけれぱ死罪。二人は、忠兵衛の故郷、新口村に向かって逃げ落ちます。実家にも追手が迫つていると思い、二人はまず、幼馴染、忠三郎の家ヘ行きますが、そこヘ、偶然通りかかった実の父孫右衛門が、目前の水たまりで滑ります。下駄の鼻緒が切れた孫右衛門を見て、梅川は思わず走り出て介抱します。その仕草に全てを察した孫右衞門は、そっと路銀を渡して、無事を願いつつ、二人を、落ち延びさせます。