リ サ イ タ ル

 

音声

[ 約2分 ]


 「うちわ売り」は、江戸の風物詩の一つですが、この作品では、「うちわ売り」を生業とする女性の哀歓をとおして、貪しい生活を強いられている人々を描いています。
 曲は、「うちわ売り」の女性の口上から始まりますが、一転して身の上ぱなしに移ります。好いた同士の貧しくも楽しかった生活が、亭主が飲む打つ買うの極道者となリ、騒ぎを起こしたために、長屋中が大騒動となって一変します。女房は、極道者の亭主を追い出してしまい、しがない「うちわ売り」となって暮らしていますが、もともと好いた同士の亭主のことが忘れられません。
 この女性は、勝気で意地っ張りのくせに、女の弱さをちょっぴり持った可愛い女性です。幕切れに、追い出した亭主を垣間見て、胸をときめかしますが、見失つてしまい、諦めて、健気に商売道具を担いで去って行く女の哀れさを、深刻がらずにさり気なく表現しました。長唄のみにとらわれず、浄るリ的な下地に、ちょっぴり現代感覚で味付けした作風になっています。あまり難しくせず、何よリも、お客様に楽しんで頂けるように心がけた作品です。