リ サ イ タ ル

 


 「弾き語リ」のできる創作のために、「上方言葉を生かした物語で、哀愁があって、それでいて面白くて、ちょっぴり色っぽく楽しい歌詞を作れないか」との難題に、叩き台としてお応えしたのがこの「城山狸」です。城山は、中島先生のお稽古場のある大阪の高槻にあリます。この辺りは京都と大阪の中間に位置する交通の要衝で、十六世紀の初めには、土豪の能勢氏が、淀川支流の芥川の摂津峡の東側の山に「芥川城」を築城L、その後、細川晴元、三好長慶を経てキリシタン大名として名を馳せた高山右近父子が城主となリました。しかし、次第に山城よリは平地の城が好まれるようになり、新たに平城の高槻城が築かれて、芥川城は廃城となリまLた。この旧城跡付近が「城山」と呼ぱれる遺跡で、今でも狸が出没します。  この曲の物語は、キリシタンと共にもたらされて流布していた「伊曾保物語』に因んぞ、城山に棲む狸をテーマとして、古い流行歌も折り込んぞ民話風に仕上げたものです。昔々のとある日、この辺りに棲む狸が盛んに田畑を荒らすのを見かねた猟師が撃ち取リますが、その快感が忘れられず、無益な殺生とは知リつつも興にあかせて狸狩りを続けています。そこで、勇気ある若い狸が修行僧に化けて猟師の家に懇願に行く、というのが物語の発端です。2000年12月4日「中島勝祐作品展」で初演されました。
 立方の吉村古ゆう師は、昭和39年、東京生まれ。吉村雄輝四世家元の舞台に感動して内弟子に入ったそうです。芸術祭優秀賞はじめ数々の賞を受賞されて、注目を浴びています。この曲は、平成15(2003)年、京都芸術センターにて、自らの作舞で初演され好評を博しまLた。昨年の紀尾井小 ホールにおける御自身のリサイタルでこの曲を再演され、芸術選奨支部科学大臣新人賞の栄に輝かれました。