リ サ イ タ ル

 

音声

[ 約2分 ]


 これは、私が開設当初から講師を勤めております大阪の朝日カルチャーセンターの、開講五周年記念に、昭和59年(1984)、同センターの邦楽教室の講師が総出演できる新作ものとして委嘱を受けて作曲し、3月24日の「第五回邦楽まつり」にて初演Lた作品です。今は亡き浄曲の菊原初子先生、義太夫の鶴沢寛八先生をはじめ、現在第一線でご活躍中の長唄の宮田哲男先生、尺八の星田一山先生、笛の藤舎推峰(現、名生)先生他、錚々たる先生方が一堂に会されての演奏で、同センターとしても画期的な舞台として、話題になった作品です。
 作詞は、今年九月に急逝されました海津勝一郎先生ですが、原拠は井原西鶴(寛永十九~元禄六=1642~93)の浮世草子「好色一代女」です。西鶴は、「好色五人女」や「好色一代女」を立て続けに発表していますが、「五人女」は、お夏やお七など実在の人物と事件をモデルにした作品であるのに対して、「一代女」は、京都は嵯峨の好色庵に隠棲している老尼が、訪れて来たニ人の若者の求めに応じて、その有為転変の生涯の好色生活を物語る、という趣向のもとに展開しています。この作品では、そうした尼僧の懺悔物語をふまえ、舞台を難波に置き換えて、長唄、三曲(地歌・竿曲・尺八)、義太夫節、小唄を交互に取り入れながら、好色女の一生を歌い上げています。